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2012年10月

2012年10月31日 (水)

仕事とプライベートはキッチリ分けて~個人事業の経理~

皆様、こんにちは。

さて、個人事業の経理を行う際に気をつけなくてはならないのが、

 「仕事のお金と、事業主個人のお金とをはっきり区別する」

ということです。


会社の場合、全ての契約や取引は、「○○株式会社」等の名前で行わなくてはならず、個人名で取引を行っても会社に権利義務は帰属いたしません。
契約書などの書類に書くのも会社名ですし、お金の出し入れも会社名義の銀行口座を使用します。

従って、会社の場合は、会社のお金と個人のお金は必然的に区別されるのです。
(というか、会社ではきちんと組織的に会社のお金と個人のお金を区別しないと、会社の取引としては成立しません。)


しかし、個人事業の場合、事業のお金と個人の生活とが密接につながっているため、ともすると両者がごちゃまぜになる恐れがあります。

そのため、個人事業の経理を行う際は、

 「事業で発生した収入・支出と、プライベートの収入・支出とをハッキリ区別する」

ことがとても重要になります。

「これって、事業にかかった費用なの?それとも、家計の支払なの?」

という点をきちんと区分して経理を行うことが必要です。


また、現金の管理においては、

●手許にある現金を、事業用の現金と家計のお金とに区別したり、
 (事業のためのお金は、事業用の金庫などで管理)

●個人の銀行口座の他に、事業用の銀行口座を作ったり、
 (そして、事業の必要経費に当たらない支払いは、事業用の口座からは引き出さない)

●もしプライベートのお財布から事業のための交通費や日常的な支払を行ってしまった時は、すぐに精算を行ったり、


といったことを行うのが良いでしょう。


しかしながら、やはり個人事業の場合は、個人事業主の生活費は事業から得た収入から引き出すことになりますので、事業のお金と生活のお金とを全く切り離してしまうことはできません

事業用のお金をプライベートの支払いに充てた場合は、“事業主貸”という勘定科目を使って、事業用の支出とは区別して経理を行います。

逆に、事業資金が不足した時などにプライベートのお金を事業用に補填した場合などは、“事業主借”という勘定科目を使います。


・・・・このように、個人事業の場合、“事業のお金と生活のお金とが密接につながっている”という性質上、事業のお金とプライベートのお金とを区別するためには少し工夫が要ります。


実務的には、上記で書きましたポイントに気をつけることが大切ですが、何よりも重要なのは、

 「初めに経理方針を作成し、どの収入、どの支出が、どの割合で、事業の収入・支出として認識するべきかを明確にすること」

です。

経理方針については、きちんと文書で作成しておきましょう。

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小笠原会計事務所
公認会計士 税理士
小笠原 薫子
URL: http://ogasawara-accounting.my.coocan.jp
お問い合わせはこちらから↓
http://ogasawara-accounting.my.coocan.jp/index5f.html

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2012年10月30日 (火)

個人事業を始める際に必要な手続は?

皆様、こんにちは。

以前、起業する際には、個人事業が有利なのか、それとも会社が有利なのか、というTOPICについて書きました。

(10月8日付「個人事業 vs 会社設立(3) - 税金以外の要因」
 詳しくは、コチラ↓
http://ogasawara-accounting.tea-nifty.com/hp/2012/10/post.html )

その中の④で、

「これに対し、個人事業では税務署等へ開業の届出書類を提出するだけでOKです。」

と書きました。


それでは、具体的にどのような書類を作成し、どこに提出する必要があるのでしょうか。


●開業したことを届け出る

まず、開業をしたことを届け出る必要があります。

①「個人事業の開廃業等届出書」
  →開業から1ヶ月以内に管轄する税務署へ提出します。

  これにより、「事業所得」という区分が適用されることになります。


②「事業開始等申告書」(名称は都道府県により異なります)
  →都道府県税事務所へ提出します。
   なお、提出期限は都道府県によって異なるので、確認が必要です。
    (東京都は開業から15日以内です。)


③「個人事業開始申告書」(名称は市町村により異なります)
  →市役所、町村役場へ提出します。
   なお、提出期限は市町村によって異なるので、確認が必要です。
    (東京都は、都税事務所へ②を提出していれば、区役所への届出は不要です。)


●税務上の特典を受けるために

①「所得税の青色申告承認申請書」
  →青色申告を希望する場合、開業から2ヶ月以内に管轄する税務署へ提出します。

  *青色申告のメリットについては、10月11日「青色申告って・・・・(個人)」↓
   http://ogasawara-accounting.tea-nifty.com/hp/2012/10/vs-d7eb.html
   を参照してくださいね。


②「青色事業専従者給与に関する届出書」
  →青色申告を希望し、青色事業専従者給与を支払う場合、開業から2ヶ月以内に管轄する税務署へ提出します。


●従業員を雇用した場合

①税務署に提出するもの

・従業員に給与を支払う場合: 「給与支払事務所等の開設届出書」

・源泉所得税の納期の特例を受ける場合: 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」


②事業地の労働基準監督署に提出するもの(従業員を採用した場合)

・「労働保険保険関係成立届」

・「労働保険概算保険料申告書」


③事業地の公共職業安定所へ提出するもの(従業員を採用した場合)

・「雇用保険適用事業所設置届」

・「雇用保険被保険者資格取得届」


●必要に応じて提出するもの

①税務署へ提出するもの

・帳簿または書類について電子データ保存を選択する場合
 →「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」または「国税関係書類の電磁的記録等による保存の承認申請書」

・納税地を住所に代えて事業所とする場合
 →「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」

・棚卸資産の評価方法や減価償却資産の償却方法について届け出る場合
 →「所得税の棚卸資産の評価方法・所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」


②事業地の年金事務所へ提出するもの(従業員が常時5人以上の場合。ただし、サービス業の一部-クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等-や農業、漁業等を除く。)

・「健康保険・厚生年金保険新規適用届」

・「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」


・・・・ざっとこんな感じです。

たくさん書類の名前が並んでしまいましたが、提出書類名を読んでいるだけでイヤになってしまったでしょうか。

ただ、会社を設立する手続に比べたら簡易で複雑ではありませんので、意外とすぐにできてしまう、という感じだと思います。

なお、届出書類は、控え(用紙がついていない場合はコピーをとる)にも文書収受印をもらい、保管しておきましょう。


わからないこと、ご不明な点などがあれば、お近くの会計事務所へ聞いてみることをおススメします。

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2012年10月24日 (水)

必要な資金はどこから集めますか?(個人)

皆様、こんにちは。

前回は、開業に当たりどれだけの資金が必要なのかを見積もって一覧表にする、というところまで話が進みました。

(詳しくは、コチラ↓
http://ogasawara-accounting.tea-nifty.com/hp/2012/10/post-b044.html )


さて、必要な開業資金を見積もったら、次は、

  自己資金はどれくらいあるのか?

をチェックします。


預貯金、前いた会社の退職金、有価証券、不動産、生命保険(※1)などなど・・・・。

ご自分の事業に当てられるものはどれだけあるかをリストアップし、一覧表にします。

(※1: 生命保険については、中途解約は損ですのでおススメしません。が、私の友人の一人は、他に資金を集める術が全くなかったため生命保険を解約し、その解約金を元手に最低限の設備を整えて開業した、という例もあります。ラッキーなことに、彼の事業は今まで順調に進んでいますが。。。。)


集めることができる自己資金をリストアップしたら、前回作成した「必要な開業資金」の一覧表と比べ、必要な開業資金の各項目に自己資金を充当して行きます。

その結果、自己資金ですべてまかなうことができればラッキーですが、不足する場合は、

① 事業のプランそのものを見直す

- 開業の費用で節約できるものはないか


② 資金の不足分を他から調達する


- 家族や親戚、金融機関などから借入ができないか


ことを考える必要があります。

ただ、については、“必要な開業資金に自己資金があとちょっとだけ足りない”という状況には効果的ですが、必要な開業資金と自己資金との差が大きい場合には、ちょっぴりの費用の節約をひねり出すことに労力をかけるのはナンセンスでしょう。


で自己資金の不足を解決できなかった場合は、を検討します。

まず、家族、親戚などから支援をしてもらうという方法があります。
なお、ご両親からの援助である場合には、「相続時精算課税制度」(※2)を利用し、相続財産を先取りして受け取ることができる場合もあります。

(※2: 相続時精算課税制度では、65歳以上の親から20歳以上の子供への贈与は、2,500万円までは受贈時点で課税されず、2,500万円超の部分については一律20%で課税されます。そして、相続が発生した時に相続・遺贈により取得した財産と生前に受贈した財産とを合わせて、相続税額を計算する制度です。この制度により、相続財産の移転の早期化が図られています。)


家族・親戚からの援助で補いきれない場合は、金融機関からの借入を検討します。

ただ、市中銀行などは、原則として担保が要求されますし、これから開業しようという時は取引実績もありませんので、かなり厳しいといえます。

信用金庫、信用組合は、基本的には銀行と同じではありますが、比較的小さな企業を相手にしていたり、小回りが利くという面がありますので、銀行よりはハードルが低いといわれています。

しかし、これから起業する個人事業主にとって、民間の金融機関から必要な資金援助を得るのは難しいでしょう。

そのような場合には、政府系金融機関(日本政策金融公庫)に相談したり、自治体の融資を検討してみるのも良いでしょう。


ちなみに、個人事業を始めるにあたり、ご両親から比較的多額の援助が得られるにもかかわらず、銀行や政府系金融機関の借入を行おうと考えている方がいらっしゃいました。
理由は、「ちょっと親には頼みにくい」といった、見栄のようなもののようでした。

しかし、一緒に資金計画の段階でご相談させていただくうちに、

 ☆ 開業するためには一体どれだけの資金が必要で

 ☆ 自己資金がいくらあって

 ☆ 提供できる担保はどれだけで

 ☆ 親の援助がなければどれくらい金融機関から借入を行わなくてはならないか


を、順番に検討して行った結果、全面的にご両親からの援助を受けることを決意されました。

やはり、可能であるならば、事業を始めようとする方の人となりをよく理解しているご家族やご親戚からの援助が最も頼りになるのでしょう。

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2012年10月23日 (火)

開業に当たって必要な費用は?(個人)

皆様、こんにちは。

事業を始めようと決心し、

- 誰に

- 何を

- どのようにして売るのか

が大体決まって来て、どこで、いつ頃から事業をスタートするのかのアウトラインが固まって来たところで、考えなくてはならない重要なものは、

  「開業資金」、つまり、お金

です。

開業する前に、開業時に一時的にかかる費用(=開業準備資金)だけでなく、開業後に発生する費用(=運転資金)も考慮に入れる必要があります。


まず、開業準備資金として、どのような費用が必要となるでしょうか。

●(賃貸の場合)事務所・店舗の権利金、保証金

●(建設・購入の場合)事務所・店舗の建築費、取得費用

●事務所・店舗の改装費用

●看板、ポスティング費用

●家具、厨房機器、什器、消耗品

●開店時の製品・商品に必要な仕入代

などが必要となるでしょう。

開業準備資金は、将来の利益を生み出す源泉となる重要なものですが、事業を行っていくと共に回収することが必要ですので、必要最低限に抑えるということも大事だと思います。


そして、開業してからの運転資金についても、半年程度は準備しておきたいものです。

商売の大きさ(=営業の量)に比例して変動するものとして、

●材料費、仕入代

●外注加工費

などが、

営業の量とは関係なく、常に一定金額発生するものとしては、

●人件費(給料、パート・アルバイト代)

●家賃

●水道光熱費

●リース料

●広告宣伝費

●借入金返済のための資金

などがあり、これに加え、

●事業主の当面の生活費

も考慮に入れておいたほうが良いです。


開業資金のどの項目が必要になるかについては、ご自分が、

 
☆ 何の商売を

 ☆ どのような形態でやっていきたいのか

により変わってきますので、資金のプランを立てる際には、

 
☆ 具体的に

 
☆ 考えられる限りの項目

を洗い出して、一覧表にしておくことをおススメします。



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2012年10月20日 (土)

税理士の役割(納税の権利と義務-ひとり言-)

皆様、こんにちは。

最近、「品質の高いサービスを提供するためには“日々是勉強”」、ということで、できる限り研修等に参加しているのですが、昨日は公認会計士協会税務業務部会の研修を受けてまいりました。

事前に通知されていた内容は「国税通則法について」ということでしたので、改正の内容についての説明かな、と思っていたのですが、実際はそんな単純なものではありませんでした。


講義の中心は、

 「納税者には、

  ☆ 義務

  
☆ 権利

  の両方がある。


というものでした。


確かに、憲法第30条に

「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」

と定められていますが、権利についての明文規定は憲法にはありません。

また、各税法には、納税者の義務に関する規定は多いのですが、権利に関する規定は非常に少ないと感じています。


税務の専門家(=税理士)が必要なのは、

「人々が自分の税金を合法的に(もちろん、“脱税”は問題外です)できるだけ安くしたいと考えているから」

であり、そのために、高い報酬を支払ってでも

税務の専門家のサポートが必要である」

と考えているからであり、

タックス・プランニングのできない専門家は、単なる記帳代行と申告書作成業務に過ぎず、存在意義がない」

と、講師の先生が講義の冒頭でおっしゃったのです。


私自身が目標にしていることを、いきなりガツンと言われて、心が引き締まりました。


その後、講義は、納税者の権利義務という観点から、国税通則法の歴史的背景、日米比較、目的・概要、そして今回の改正についての説明が行われました。

私は、このように大きな視点で行われる話を聞くのが大好きなので、とても有意義な時間を過ごすことができました。



ともすれば、税金を支払う義務ばかりに目が行きがちですが、納税者の権利という視点を忘れてはならない、と感じました。

各税法の規定から“納税者の権利”を拾い、常に能動的に合法的なタックス・プランニングをお客様に提案できる税理士でありたい、と改めて実感した一日でした。

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2012年10月18日 (木)

企業開示の新しい潮流 ~統合報告制度~

皆様、こんにちは。

一昨日、企業開示についての研修を受けてまいりました。

テーマは、「統合報告制度(=Integrated Reporting)」。

まだ日本では制度化されていないため、一般的にはまだ周知されていないかもしれませんが、各監査法人は、今、この「統合報告」をとても重要なトピックとして注目しています。

統合報告」とは、新しい企業の情報開示の仕組みのことで、

“組織が、ステークホルダー(利害関係者)、特に投資家に対し、経営戦略、ガバナンス、パフォーマンス及び見通しに関する情報を、明瞭、簡潔、一貫かつ比較可能な形で報告するもの”

であり、

財務面だけではなく、組織の持続可能性に関する非財務情報も含む

ものです。


統合報告」が言われ始めた背景として、経営環境が変化し、

- 金融市場が短期志向となり、中長期的視点に立った企業評価が行われず、金融市場が安定しないこと、

- グローバルな地球環境問題の深刻化、資源需給の逼迫といった持続可能性に関する課題が顕在化する一方で、社会的コスト増大の要因に対して市場がうまく機能していないこと、そして、

- 経営の不確実性が増大し、知的資本の重要性も高まっている中、報告書の利用者が企業の全体像を把握できる情報を企業がわかりやすく提供できていない

という課題が噴出してきたことにあります。

そして、国際的に一貫した枠組みの中で、企業が事業を行う商業上、社会上および環境上の背景を反映できるように、企業の戦略、ガバナンス、業績および見通しについての重要な情報をまとめ上げ、それによって企業が現在およびその将来にどのように価値を創造するかについて、明瞭かつ簡潔に表明することを目的とした中長期的な視点での企業報告を実現するために、国際統合報告審議会(IIRC)が設立されたのです。


IIRCが発行した「統合報告に向けて 21世紀における価値の伝達」というディスカッションペーパーによると、統合報告は、

●戦略への焦点

●情報の結合性(関連性)

●未来志向

●対応性およびステークホルダー包含性

●簡潔性、信頼性および重要性


を報告原則とし、

●組織概要及びビジネスモデル

●リスクと機会を含む事業活動の状況

●戦略目標及び当該目標を達成するための戦略

●ガバナンス及び報酬

●業績

●将来の見通し


を報告要素とするもの、と位置づけられています。


そして、このような「統合報告」を導入することにより、

■企業のビジョン・戦略をより一層明確化し、

■企業に対する社会の理解・評価を大きく向上する

ことを目的としています。


・・・・現在の日本の企業開示制度やIFRSは財務情報の開示が中心ですが、統合報告では非財務情報をとても重要視しているのが特徴です。

個人的には、非財務情報は定性的な部分が多いので、実務的に比較可能な情報開示ができるのだろうか、現状ではかなり難しいのではないか、と感じました。

やはり、「統合報告」を制度化するためには、“何を開示すべきなのか”というガイドラインを明確に示すことがまず重要でしょう。
また、各企業においても、開示する体制をきちんと整える必要があります。
私見ですが、その際、「企業開示」に関する発想の転換がキーになるような気がします。

ただ、ヨハネスブルク取引所では既に「統合報告」の作成が義務付けられており、また、シンガポール証券取引所の上場企業に対し、非財務情報の開示を推奨する法律が制定されたそうです。

したがって、近い将来、日本でも「統合報告」に対応せざるを得ない状況になるかもしれません。
統合報告」が日本に導入されれば、日本企業の実務に大きな影響があることでしょう。
企業開示も税法もどんどん新しくなり、企業の実務もそれに対応してどんどん変わっていきますね。

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2012年10月16日 (火)

会社が青色申告する時のメリット

皆様、こんにちは。

前回は、会社が青色申告を行うためにはどうすればよいのかを書きました。

今日は、会社が青色申告を行ったらどうなるのか?そのメリットについて書きたいと思います。


1. 欠損金の繰越し

青色の確定申告書を提出した会社で欠損金が生じてしまった場合、翌事業年度以降9年以内の各年度の所得金額から、その欠損金の金額を控除することができます。

※平成23年度の税制改正により、従来は7年だった繰越期間が9年に延長されました。
これにより、3月決算の会社であれば、平成21年3月期以後の欠損金より9年間の繰越が可能となりました。
しかし、ここで注意すべきなのは、9年間の欠損金の繰越の適用を受けようとする場合は、帳簿書類の保存期間も9年間必要ということです。


ちなみに、繰越の期間は、

・平成16年度改正により、5年→7年に

・平成23年度改正により、7年→9年

と変遷しており、会社にとっては歓迎すべき改正の一つと言えると思います。


また、繰越欠損金を損金に算入するためには、欠損金が生じた翌年から毎年連続して確定申告書(白色でも可)を提出していなければなりません。
つまり、無申告の年度があればこの取り扱いを適用できません。

なお、平成24年4月1日以降に開始する事業年度から、繰越控除の限度額が、繰越控除前の所得金額の80%までに制限されることになりました。
ただし、中小法人等(資本金5億円以上の会社の100%子会社を除く)、公益法人等、協同組合等及び人格のない社団等については、従来どおり全額を控除することができます。


2. 欠損金の繰戻し

青色申告書を提出する会社で生じた欠損金は、その欠損金の生じた事業年度(欠損事業年度)の期首以前1年以内に開始した事業年度(「還付事業年度」)に繰り戻して、法人税額の還付を受けることができます。
ただし、資本金1億円超の会社及び資本金5億円以上の会社の100%子会社は、欠損金の繰戻し還付は受けられません。


具体的には、以下の数式で計算した金額の還付を受けることができます。

  (還付金額)=(還付事業年度の法人税額)×(欠損事業年度の欠損金額)/(還付事業年度の所得金額)


3. 各種準備金の積み立て、特別償却、税額控除

さらに、青色申告書を提出する会社は、租税特別措置法に定められている準備金の積立金額の損金算入、特別償却、税額控除が認められています。
(租税特別措置法 §55~§57の9、§58、§61の2、§42の5~§48、§42の4~§42の12)


4. 税務調査

青色申告書を提出する会社の税務調査の際、その会社の帳簿書類を調査して誤りがあることが認められた場合にのみに是正されます。
つまり、推計課税(=帳簿書類に不備があるため所得金額を把握できない場合、売上高、仕入高、経費などを推計することにより税額を算定する方法)による更正を受けることはありません。

また、税額が更正された場合、更正通知書にはその更正理由が付記されます。

さらに、更正処分に対し、異議申立てをせずに直接審査請求をすることができます。



・・・・会社が青色申告を行うことのメリットの概要はこのようなものになります。

日本では、税金を納める人が自主的に申告することにより納税金額を確定する、という「申告納税制度」を採択しています。

申告納税制度」を普及させるためには、税金を納める人が自分の所得をきちんと計算できるよう、正確な帳簿書類を作成・保管することが必要です。

青色申告制度のメリットは、日頃からきちんと帳簿書類を作成・保管している人へのごほうびです。

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2012年10月15日 (月)

会社が青色申告を行うには

皆様、こんにちは。

前回、個人事業主が青色申告を行う場合のメリットについて書きました。

会社も、青色申告を行うことにより享受することができるメリットがたくさんあります。

そこで今日は、会社が青色申告を行いたい時、どうすればよいのか?という点について書きたいと思います。


これまでのブログで、

●「個人事業 vs 会社設立(2) - 税金のいろいろな側面」(10月5日)

  詳しくはコチラ ↓
http://ogasawara-accounting.tea-nifty.com/hp/2012/10/post-2070.html

の「(5)決算・申告に係る負担」において、

会社の場合はきっちりとした記帳・決算を行なって確定申告を行なわなくてはなりませんが、個人事業の場合は簡単な記帳で済ませることもできます。』


とか、


●「青色申告って・・・・(個人)」(10月11日)

  詳しくはコチラ ↓
http://ogasawara-accounting.tea-nifty.com/hp/2012/10/vs-d7eb.html

において、

『会社(株式会社)の場合、会社法で、「適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」、「会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。」と定められていますので、正規の簿記に厳密に準拠して厳格な帳簿を作成しなくてはなりません。

と、書かせていただきました。


会社だからといって必ず青色申告ができるというわけではありません。

それでは、会社が青色申告をしようとする際には、どのようなことをする必要があるのでしょうか。


1. 帳簿の体系

まず、どのような帳簿を作る必要があるのでしょうか。

法人税法では、

① 複式簿記の原則に従い、資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引について、整然と、かつ、明瞭に記録し、その記録に基づいて決算を行うこと

② ・仕訳帳(=すべての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿)、
総勘定元帳(=すべての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿)、
・その他必要な帳簿
を備えること

③ たな卸表を作成すること

④ 貸借対照表及び損益計算書を作成すること

が必要であると定めています。


  「たくさん作成しなくてはならないから、大変だ!

と感じるかもしれませんが、はじめに帳簿の体系を作ってしまいさえすれば、実務的には、

  「日々発生した取引について、忘れないようにノート(帳簿)に記載しておく

ということを守るだけで、当たり前のこととしてできてしまうものだと思っています。


2. 帳簿の整理保存

上記の「1.」で作成した帳簿は、7年間整理保存しなくてはなりません。

なお、電磁的記録の備付け及び保存をすればよいと認められているものもあります。
電子取引(EDI=Electronic Data Interchange取引)を行った場合は、その取引の電磁的記録、または、出力して作成した書面或いはマイクロフィルムを保存しなければなりません。


3. 青色申告の承認の申請書

青色申告の承認を受けようとする場合は、税務署に、以下の期日までに申請書を提出しなくてはなりません。

- 新設法人: 設立の日以後3ヶ月を経過した日か、新設後の最初の事業年度終了の日か、どちらか早い日の前日
(※ なお、新設後最初の事業年度の期間が3ヶ月未満である場合のその翌事業年度の場合は、設立の日以後3ヶ月を経過した日か、その翌事業年度終了の日か、どちらか早い日の前日)

- 通常の事業年度: 青色申告の承認を受けようとする事業年度開始の日の前日

(注: 公益法人、人格のない社団等については説明を省略します)



・・・・と、青色申告を行うには、上記の1.~3.を満たす必要があるのです。


  
帳簿を作ったら

  
→きちんと保存

  
→きちんと承認申請


ですね!


青色申告の承認申請が行われたときは、申請について承認または却下の通知がなされることになっていますが、その事業年度の末日までに何も通知がなければ、承認があったものとされます。
通常、却下はされないようです。


次回は、青色申告を行うことによる得ることができるメリットの内容についてお話したいと思います。

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2012年10月11日 (木)

青色申告って・・・・(個人)

皆様、こんにちは。

先日のブログ「個人事業 vs 会社設立(2) - 税金のいろいろな側面」の(5) ↓

http://ogasawara-accounting.tea-nifty.com/hp/2012/10/post-2070.html

に、

「会社の場合はきっちりとした記帳・決算を行なって確定申告を行なわなくてはなりませんが、個人事業の場合は簡単な記帳で済ませることもできます。」

と書かせていただきました。

会社(株式会社)の場合、会社法で、

「適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」

「会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。」

と定められていますので、正規の簿記に厳密に準拠して厳格な帳簿を作成しなくてはなりません。


これに対し、個人はどうでしょう?

・・・・というわけで、今日は個人事業主の青色申告制度について触れたいと思います。

「青色申告制度」とはなんでしょう?
なぜ、「青色」って言うのでしょう?

青色申告制度は、きちんと帳簿をつけ、その帳簿に基づいた正確な申告を奨励するために、ちゃんとした帳簿書類を作成している個人に青色の紙(申告書)を用いて申告することを認め、その青色申告者にはいくつかの得点を付与しようという制度です。

⇒それで、「青色申告」というのです。

この制度は、不動産所得、事業所得、山林所得がある人に認められています。
青色申告」をしたい人は、通常は青色申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後新たに業務を開始した場合には、業務を開始した日から2ヶ月以内)に「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなくてはなりません。
(相続によって事業を承継した場合は、相続の開始を知った日=死亡の日の時期に応じて提出期限が定められています。)


この、「青色申告者が作成すべき帳簿」にはいくつかのレベルがあって、

①正規の簿記の原則による方法(基本はこれです)

=所得の金額が正確に計算できるように、資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を、正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明瞭に記録し、その記録に基づき貸借対照表及び損益計算書を作成する方法。


②簡易簿記による方法


=複式簿記によらず、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳を行う方法。


③現金主義による方法


=現金の収支があった時点で取引を認識して記帳する方法。


の3タイプがあります。


青色申告」を行う人の特典として、

● 赤字(純損失)となった場合、その赤字の金額を翌年以後3年以内の所得金額から差し引いて税金を計算することができたり、


● 赤字(純損失)となった場合、

(前の年の所得に税率をかけた金額)-(前の年の所得金額から今年の赤字の金額を差し引いた金額に税率をかけた金額)

に相当する金額の還付を受けることができたり、


● 引当金や特別償却準備金を必要経費に含めることができたり、


● 青色申告者の家族専従者への給与を必要経費に含めることができたり、


● 所得の金額から一定額を差し引いた金額を基に税金を計算できたりします。
青色申告特別控除

この青色申告特別控除について少し詳しく見てみますと、青色申告を行う人の所得の金額から、

- 上記
①正規の簿記の原則による方法で帳簿を作成している場合は 65万円

- 上記②簡易簿記③現金主義の場合は 10万円

が控除されるのです。

(=所得が控除されて小さくなる分、税金も安くて済む、ということ。)


ひとくちに「青色申告」といっても、個人の場合は帳簿の正確性にランク(上記①正規の簿記の原則による方法②簡易簿記による方法、及び③現金主義による記帳)があり、そのレベルによって特典も大きかったり小さかったり。。。。

初めてこのことを勉強した時、会社の法人税の規定に比べて、個人の所得税の仕組みって面白いなと思った記憶があります。
会社法でガッチガチに固められた(※実際にはかなり解釈が入り込む余地があって柔軟なのですが、試験合格直後はそう思っていました)法人税法に比べ、所得税ってなんだかユルい感じがしませんか?

(注)最後の段落は、私個人の私見でありますので、受け流していただければ幸いです。

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2012年10月10日 (水)

企業会計と税務会計(ちょっとブレイク)

皆様、こんにちは。

昨日-今日の2日間にわたり、税理士会の研修を受けてまいりました。

税制改正を中心に、日頃税理士が興味を持っている論点について講義していただき、非常に有意義でした。


講義の中で、個々の税法の規定を改正した理由として、

  『課税の公平性の観点より○○について見直しを行い、改正することにした』

という趣旨の説明が行なわれた箇所がいくつもありました。

このような説明を聞くたびに私は、税法に基づいた制度会計の一領域である税務会計は、

- 課税の公平 と、

- 租税収入の確保

を目的とした政策的な会計領域であることを、あらためて強く感じさせられました。


・・・・ここで、簡単に企業会計と税務会計との関係について説明いたします・・・・

企業会計上は、「収益」から「費用」を差し引いて「利益」を算出します。

この「収益」と「費用」に対応する概念として、税務会計には「益金」と「損金」という用語があり、「益金」から「損金」を差し引いて「所得」を計算します。

収益」と「益金」、「費用」と「損金」とは、それぞれ範囲が少しずつ異なっています。

つまり、

・「収益」であるのに「益金」には含まれないもの

・「収益」ではないのに「益金」に含まれるもの

・「費用」であるのに「損金」には含まれないもの

・「費用」ではないのに「損金」に含まれるもの

があるのです。

したがって、税務上の「所得」は、以下の算式で表すことができます。


税務上の「所得
=企業会計上の当期「利益」+「益金」算入+「損金」不算入-「益金」不算入-「損金」算入


法人税法上の「所得」は、本来は法人税法に定められているように、確定した決算に基づいて計算されます(「確定決算主義」)。
つまり、会社法上、株主総会で確定した計算書類を拠り所として税務上の計算を行なう、という考え方です。

しかし、例えば、固定資産の減価償却費は、株主総会で確定した損益計算書上に費用として計上されていなければ、税務上損金として認められないこととなっています。
これは、法人税法の規定が企業会計に大きな影響を及ぼしているのです。

言い換えれば、本来は税務会計の基準となるべき企業会計が、逆に税法の規定に制約されている、という現象がしばしば起こっているのです。


・・・・法律・政策に従った会計処理を行なうことは必要ですが、

http://ogasawara-accounting.tea-nifty.com/hp/2012/10/post-62dd.html

でも少し触れましたが、盲目的に税法に従った経理処理を行なうのではなく、常に“あるべき会計処理”を念頭において、

- この会計処理は本来の企業会計に従った処理であるのか

それとも、

- 政策的な税法上の規定に従った処理を行なっているのか

を区別して考えながら会計処理を行なっていくことが大切であると強く思います。


さて、昨日は研修の後、同じ年に公認会計士試験に合格し、今年で独立開業して9年目になる友人と東京駅で会い、食事をしてきました。

Dsc_0113

Dsc_0115

東京駅、ずいぶんときれいになっていましたね。

久しぶりに会った友人と近況を報告し合い、独立開業の先輩である友人からあたたかいアドバイスをたくさん頂いて、心がほっこりしながら帰途につきました。

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2012年10月 8日 (月)

個人事業 vs 会社設立(3) - 税金以外の要因

皆様、こんにちは。

これまで、事業を始めるに当たって、

- 会社(ここでは株式会社を意味します)を設立するのが良いのか

- 個人事業の方が良いのか

について、税金の面から比較してきました。

今回は、事業を行なうにはどちらの器(形態)が良いのかということについて、税金以外の側面について書きたいと思います。
 

① 元手

会社を設立するためには、多額の資本金が必要であるというイメージがあります。

しかし、平成18年5月1日に施行された会社法により、会社の最低資本金制度が撤廃となった(=資本金が1円でも会社を設立できるようになった)ため、個人事業との違いは実質的にはありません。


② 社会的な信用力

また、「会社には資本金があるから個人事業よりも信用力が高い」とも言われています。

これについては、上記①で説明いたしました通り、実質的には会社と個人事業との差はないといえます。

しかし、中には、個人事業者よりも会社を取引先として選ぶ企業(あくまでも企業の内部ルールとして)もあるようですし、銀行等と取引をする場合に会社の方が信用されやすいという傾向もあるようです。


③ 経営者の責任(リスク)

会社と個人事業とでは、経営者の責任(=負担するリスク)の大きさに違いがあります。


●会社は「有限責任

株式会社の経営者は、自分が出資した金額の範囲内でのみ、債権者に対して責任を負います。
つまり、経営者A氏が会社に100万円出資していた場合、会社の借金が200万円あったとしても、債権者に対しては出資していた100万円までを支払う(=会社の借金が、経営者の個人財産まで及ばない)、ということです。


●それに対し、個人事業主は「無限責任

個人事業の経営者は、出資の金額にかかわらず、債権者に対して無限の責任を負います。
つまり、債権者に借金の全額を返し終わるまで責任を免れることができない(=会社の借金が、経営者の個人財産にまで及ぶ)、ということです。


しかし、現実的には、会社で借入を行なう際に経営者の個人保証になる場合が多く、会社と個人事業とではあまり違いがないことも多いでしょう。


④ 開業の手続・設立費用 

●会社を開業する場合、会社の設立登記のため法務局に登記申請書類を提出し、審査を受ける必要があります。

そのために、

・「定款」(←公証役場での認証が必要)

・「払込証明書」

・「就任承諾書」

などの専門的な書類を作成しなくてはなりません。

そして、これらの手続を自分が行なったとしても、手数料や税金等で約25万円はかかってしまいます。

さらに、税務署等へ必要な届出書類を、所定の期限内に提出する必要があります。


●これに対し、個人事業では税務署等へ開業の届出書類を提出するだけでOKです。

また、この手続には手数料等の費用はかかりません。


⑤ 運営に関する手続

●会社の場合、役員の任期満了や、会社にとって重要な事柄を決定する場合には、株主総会や取締役会を開催し、決議を行なうことが必要です。

また、役員については登記も必要となります。

なお、その際には議事録を作成して内容を記録に残さなくてはなりません。


●これに対し、個人事業では上記のような手続は要求されていません。



=========================================================================================

・・・・さて、会社(株式会社)と個人事業とについて、いろんな側面から両者を比較してきましたが、いかがでしょうか。

細かい違いがあるため、全ての業種・業態について、

「会社が良い」

とか、

「個人事業が良い」

などとは断定できないことがおわかりになると思います。

また、経済状況の変動によっても、どちらが有利に働くのかが変わってきます。


重要なのは、細かい項目を調べ、比較することに時間をかけるよりも、


- 自分がどのようなモノ・サービスを

- 誰に売りたいのか

そして、そのためには

- 自分の仕事場(お店、事務所など)を将来どんな風にしたいのか


という原点に帰り、そのためには、会社がしっくりくるのか、それとも、個人事業がピッタリくるのか、を考えていくべきでしょう。
まずは個人事業から始めて、軌道に乗ってから会社へ変更するという選択肢もあるでしょう。


そして、夢を現実のものとするために、

 ★ 経営計画や資金計画をどうするか?

 ★ マーケティングをどうするか?


という大局的かつ戦略的事項について、専門家を利用しながらじっくりと検討し、結論を出すことに労力を割くことが成功の秘訣であると考えます。


事業をスタートするに当たり、起業家の方々が置かれた環境は千差万別です。
企業家の方々の夢や希望、条件についてきちんと耳を傾け、かつ、状況を的確に見極めてアドバイスをしてくれるような公認会計士・税理士を探して、よく相談することが得策であると思います。

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2012年10月 5日 (金)

個人事業 vs 会社設立(2) - 税金のいろいろな側面

皆様、こんにちは。

前々回は、所得金額に課せられる税金の税率を、個人事業と会社とで比較してみました。
 ↓
http://ogasawara-accounting.tea-nifty.com/hp/2012/10/vs-b652.html


今日は、個人事業と会社とで、税率以外の項目ではどのような違うのかについて考えてみます。


(1)経営者の給料の扱い

利益に対する影響が大きいと思われる項目として、経営者自身の給料(役員報酬)の取り扱いの違いが挙げられます。

個人事業の場合、経営者自身の給料を経費とすることはできませんが、会社の場合は経営者の給料も経費として収入から控除できます。


(2)家族従業員の給料の扱い

家族の給料についても違いがあります。

会社の場合は必要経費として落とすことができますが、個人事業の場合は税務署に事前に届出書等を提出しなければ経費にできません。


(3)経費の取り扱い

経費については、個人事業での取り扱いと会社での取り扱いが異なる費目がいくつもあります。

例えば、会社では社宅の家賃も経費として認められますが、個人の場合は認められません。

また、個人の場合は事業主と生計を一にする親族に支払った賃借料は経費として認められません。

一方で、交際費や寄付金について、会社では税務上必要経費として認められる金額について制限が設けられていますが、個人事業では税法に規定がないため、個別に必要経費に該当するかどうかを判別しなければなりません。

さらに、会社の場合、青色申告・白色申告を問わず引当金の計上が認められますが、個人事業の場合は青色申告の場合にのみ引き当てが認められています。


経費の取り扱いの違いが、会社に有利に働くか、個人事業に有利に働くかは、個々のケースによって異なるため、一概にどちらが良いのかを言い切ることは正直難しいです。


(4)赤字となった場合の損失の繰越(青色申告の場合)

できれば赤字にはなりたくないものですが、赤字となった場合、会社の場合はその損失を9年間繰り越すことができます。

しかし、個人事業においては3年間のみしか損失を繰り越すことができません。


(5)決算・申告に係る負担

税金の金額自体に関係はないのですが、税金に関することで影響が大きいのは、決算・申告に係る作業負担です。

会社の場合はきっちりとした記帳・決算を行なって確定申告を行なわなくてはなりませんが、個人事業の場合は簡単な記帳で済ませることもできます。


・・・・世間では、よく「節税のためには会社設立を!」と言われますが、こうみると税金面では会社の方が有利な規定が多いように見えます。

ただ、「節税」という側面は、事業を行なうにあたって考慮すべきもののうちの一部にすぎないと私は思うのです。

次回、個人事業か会社設立かを決める際に、税金以外に考慮すべき点について書きたいと思います。

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2012年10月 4日 (木)

(雑感)「中小企業の会計に関する基本要領」に寄せて

皆様、こんにちは。

本来ならば、前回に引き続き、「個人事業 vs 会社設立」のトピックについて書くところですが、昨日税理士会の「中小企業の会計に関する基本要領」についての研修を受けてきて、その際に感じたことがあり、今日はそのことについて書きたいと思います。

「中小企業の会計に関する基本要領」(以下「中小会計要領」と呼びます)とは、「中小企業の多様な実態に配慮し、その成長に資するため、中小企業が会社法上の計算書類等を作成する際に、参照するための会計処理や注記等」であり、今年2月1日に公表されました。
(出典: 「中小会計要領」Ⅰ.総論 1.目的 (1)。なお、「中小会計要領」は、中小企業庁のHPで参照することが出来ます。)

また、「中小会計要領」は、平成17年8月に日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会により策定された、「中小企業の会計処理等に関する指針」と比べて簡便な会計処理をすることが適当と考えられる中小企業を対象に、その実態に即した会計処理のありかたを取りまとめるべきとの意見を踏まえて作成されたものです。
(出典: 「中小会計要領」Ⅰ.総論 1.目的 (2)。なお、「中小企業の会計処理等に関する指針」は、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の各HPで参照することが出来ます。)


「中小会計要領」のポイントは、

・正確な財務情報をもって

・経営状況を把握し

・経営改善等に役立てたり

・金融機関への情報提供を行なうこと

で、これらの項目が「中小企業が存続・発展していくために極めて重要」である、ということです。


そして、この背景には、

・中小企業は主に地域金融機関等から資金調達をしており

・中小企業において、計算書類等の開示先は限定的で

・多くの中小企業では、税法を意識した会計処理が行なわれており

・多くの中小企業では経理部門の人的リソースが限られている

があるという内容が、「中小企業の会計に関する研究会中間報告書」(中小企業庁)に書かれています。


ここでは「中小会計要領」や「中小企業の会計処理等に関する指針」の詳しい内容については省略いたしますが、私が少なからず驚いたのは、3点目の

「多くの中小企業では、税法を意識した会計処理が行なわれている」

という点です。

そもそも、財務会計とは、企業に生起する経済事象に関して、企業に直接・間接に関与する外部利害関係者の合理的な判断や意思決定を可能にし促進するために、企業の経済事象を認識・測定し、記録し、伝達(報告)する行為です。

財務会計には、

- 情報提供機能

- 利害調整機能

とがあります。

税法も、日本の企業会計制度を支える法令の一つ(他に、会社法、金融商品取引法)であることには間違いありませんが、税務会計には「課税の公平と租税収入の確保」を目的とした政策的な処理が含まれています。

現実として、多くの中小企業の会計処理が税法に傾いたものとなっているのであれば、その処理によった財務諸表は、あるべき会計処理(=企業の財政状態及び経営成績をそのまま正しく表すもの)から少しずれてしまったものとなっているかもしれません。


私は、公認会計士2次試験合格後約16年間にわたり、都内のBIG4系の監査法人及び税理士法人に勤務いたしました。
会計監査では、企業のあるべき会計処理・表示をとことん突き詰めて考え、学びました。
その上で、税務の実務を経験することにより、「あるべき会計の心」と、「政策的な税法の心」とがある程度わかってきたような気がします。

企業が本当に求めているのは何かということは、あるべき企業会計と政策的な税務処理の両面から包括的に企業を眺めないと見えてこないと思っています。

私は、埼玉で独立開業して日が浅いのですが、まだまだ中小企業の会計・経理実務の現実について理解が不足しているかもしれないと感じました。

「あるべき会計の心」と「政策的な税法の心」を常に持って、現実を的確に把握し、

●経営者に対する財務の安全性と企業の成長のための会計情報

●金融機関等に対する企業の実態を的確に示すための会計情報

に関し、一つ一つの企業のニーズに合わせて最適にカスタマイズしたサービスを提供できる会計人を目指し、日々精進したいと思います。

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2012年10月 2日 (火)

個人事業 vs 会社設立(1) - 節税?

皆様、こんにちは。

事業を始めようと思ったとき、そもそも、事業を行なう器、つまり

●個人事業にするか

●会社を設立するか

を決めなくてはなりません。

よく、

“節税するには「会社」の方が有利”

と言われています。

会社、個人事業のそれぞれについて、少し見てみましょう。

(1)会社(株式会社)

会社(株式会社)には、所得金額に対して法人税、法人住民税、事業税が課せられます。

中小法人(期末における資本または出資の金額が1億円以下)の場合、

- 法人税が、所得金額が800万円以下の金額に対して 15%、800万円超の金額に対して 25.5%
- 復興特別法人税が、基準法人税額に対して 10%(平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度)
- 法人住民税が、法人税額の20.7%(制限税率)
- 事業税が、所得金額に対して7.56%(東京都・大阪府の外形標準課税適用法人の場合)

の税金が課せられます。

これらを合わせてどれだけの税金を払わなくてはならないかを計算すると、

所得金額が800万円以下であれば約25.5%、それを超える所得金額があれば超える部分については約38%の税率

となります。
(実際の税負担の割合=「実効税率」の詳しい計算方法は、ここでは説明を省略します。)


(2)個人事業

それに対し、個人事業の場合は、所得税が累進課税で課せられるため、所得が高ければ高いほど段階的に税率が高くなります。
したがって、税負担は所得金額により 15%~50% の範囲で課せられます。


会社(株式会社)と個人事業とを税率面で比較すると、

確かに、「所得金額が330万円以上であれば会社(株式会社)の方が有利で、それよりも所得が少なければ個人事業の方が有利である」

ということが言えるでしょう。


ただ、税金という問題を考える上では、税率の他にも考慮すべき点はたくさんあります。

それらについては、次回以降で検討したいと思います。

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2012年10月 1日 (月)

事業を始めると決めたら・・・・CVP分析利用例

皆様、こんにちは。

前回まで、

「一体どれだけ売って」 - 「どれだけ仕入れれば」 - 「どのくらいの利益が上がるのか」

という関係についての分析(CVP分析、損益分岐点分析)が、事業をスタートする際にいかに重要かということの説明をしてきました。

さて、以前、お店(洋菓子・軽食)を持ちたいと考えている知人の話を書きました。

 ↓

http://ogasawara-accounting.tea-nifty.com/hp/2012/09/post-cdbc.html


その方は、いろいろ検討しても、メインとなる商品や、対象となるお客様がイマイチ絞り込めない。。。。
きっと、とても器用で、しかも優しい気持ちの方なので、いろんな商品を作れるし、いろんな方にいろんな商品を召し上がっていただきたい・・・・と思ってしまっているのでしょう。

でも、実務上話が先に進まみません。

そこで私は、3つのお店の候補地、つまり、

①東京23区の、たくさんの、但し流行がめまぐるしく変化する、若者の集まる場所での貸店舗(駅前を前提)

②ご実家で店舗を建設(県庁所在地でビジネス・商業の中心となる市内の、おそらく住宅地)

③関東北部の親御さん所有の店舗で営業

の各ケースをシミュレーションし、CVP分析を行ってみれば一歩先に進めるのではないかと考え、3つのケースの比較を作成し、業種・地域の情報や、売上形態についての検討(店舗での飲食、持ち帰り、お取り寄せなどの販売方法の考慮)を加えた資料をご提示しました。

すると、上記の3つのケースは、粗利率は同一でも固定費の額がかなり異なるため、目標とする売上高(=損益分岐点)に大きな差が出てくるということが、CVP分析を行なうことによりビジュアル的にかなり明確となりました。
あとは、業種の特徴や各地域のマーケット情報など、収集可能な情報をプラスして、自分の夢をかなえることができるのはどこなのか、を検討することが重要です。

知人は、3つのケースのCVP分析結果を検討し、早速家族会議を開いて話し合った結果、①の方向で、具体的に構想を練り直し、店舗探しを始めることに決めたそうです。


この場合は、

- 店舗の所有形態

- 立地条件

- 顧客層

などが、3つの候補地の条件が明確に相違していたため、単純なCVP分析結果を比較して目標売上高を明確にした上で、地域の特性を考慮することにより、どの選択肢が知人の将来のビジョンとマッチしたのか、ということが自ずと浮き彫りにされたケースです。

知人がどのようなお店を開くのか、今から私も楽しみです。

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